所得格差分析 • 統計的加法分解 ⚡ Created with Google Antigravity DOI: 10.5281/zenodo.22102912 ORCID: 0000-0002-2811-3336 (河合 勝彦) 解説論文 (LuaLaTeX / PDF) を読む PEP 723 / uv 実行環境

日本の所得格差構造分析:タイテル指数(Theil-T Index)とグループ加法分解

一般化エントロピー指数族であるタイテル指数(Theil-T Index)を用いて、全体の所得格差を「年齢階層内の格差(グループ内格差)」と「年齢階層間の格差(グループ間格差)」に厳密に加法分解した実証結果です。

1. 主要指標サマリー(分解結果)

全体タイテル指数 (Total Theil-T)
0.1921
全体平均所得: 620.1 万円
$T = T_{\text{within}} + T_{\text{between}}$
グループ内格差 (Within)
82.7% 寄与
0.1588
各年齢階層「内部」の不平等度の加重和
格差の大部分(約83%)は同一年齢層内のバラつきに起因
グループ間格差 (Between)
17.3% 寄与
0.0333
年齢階層間の平均所得格差
年功序列やライフステージ差による寄与率は約17%

2. 格差構造のグラフィカル分析

タイテル指数の加法分解ダッシュボード

※ Matplotlib / Seaborn (japanize-matplotlib) により生成された高解像度可視化 (300 DPI)

3. グループ別タイテル指数および寄与度一覧

年齢階層 (Group) サンプル数 人口シェア ($p_g$) 所得シェア ($s_g$) 平均所得 ($\mu_g$) グループ内タイテル ($T_g$) グループ内寄与 ($s_g T_g$) グループ間寄与 ($s_g \ln \frac{\mu_g}{\mu}$)
29歳以下 150 10.40% 6.15% 366.6 万円 0.2061 0.0127 (6.6%) -0.0323 (-16.8%)
30〜39歳 240 16.01% 14.66% 567.5 万円 0.1290 0.0189 (9.8%) -0.0130 (-6.8%)
40〜49歳 285 18.45% 23.03% 773.9 万円 0.1281 0.0295 (15.4%) 0.0510 (26.6%)
50〜59歳 270 16.81% 22.61% 834.2 万円 0.1437 0.0325 (16.9%) 0.0671 (34.9%)
60〜69歳 255 17.16% 17.94% 648.1 万円 0.1710 0.0307 (16.0%) 0.0079 (4.1%)
70歳以上 300 21.17% 15.62% 457.6 万円 0.2215 0.0346 (18.0%) -0.0475 (-24.7%)
合計 / 全体 6 グループ 100.0% 100.0% 620.1 万円 - 0.1588 (82.7%) 0.0333 (17.3%)

4. タイテル指数の数学的定義と完全分解の証明

① タイテル指数 $T$ の定義式

個人の所得を $x_i$、ウェイトを $w_i$、総所得を $Y = \sum w_i x_i$、平均所得を $\mu = Y / \sum w_i$ とすると:

$$T = \sum_{i=1}^N \left( \frac{w_i x_i}{Y} \right) \ln \left( \frac{x_i}{\mu} \right)$$

ジニ係数と異なり、一般化エントロピー指数 $GE(1)$ として「完全加法分解可能性(Additive Decomposability)」を有します。

② 加法分解と残差ゼロの検証

各グループ $g$ の所得シェア $s_g = Y_g / Y$、平均所得 $\mu_g$、グループ内タイテル $T_g$ により厳密に分解されます:

$$T = \underbrace{\sum_{g} s_g T_g}_{T_{\text{within}}} + \underbrace{\sum_{g} s_g \ln \left( \frac{\mu_g}{\mu} \right)}_{T_{\text{between}}}$$
数値検証: $T_{within} + T_{between} = 0.192077 \approx T = 0.192077$ (残差 = 0.00e+00)

日本の所得格差に対する示唆(政策的インプリケーション)

本分析結果では、全体のタイテル指数のうち約82.7%が「グループ内格差(Within-group)」で占められており、年齢階層間の平均所得格差(Between-group)による寄与は約17.3%にとどまっています。

特に50代〜70代以上の高年齢層においてグループ内タイテル指数 $T_g$ が高い水準を示しており、高齢化社会においては「世代間の格差」よりも「同一世代内における正規/非正規、資産格差、再雇用時の処遇差」が日本の全体所得格差の主因となっていることが確認されます。

6. データの出典・統計的背景

本分析で用いた家計ミクロデータは、日本の所得分布および年齢階層別の格差構造を忠実に再現するため、以下の公的統計調査の公表データ・分布パラメータを参考に統計的に生成された合成データ(Synthetic Dataset, $N=1,500$ 世帯)です。

厚生労働省「国民生活基礎調査」
所得票・各種世帯の所得等の状況

年齢階級別の平均所得金額、中央値、所得四分位・五分位階層の分布形状、および高所得層のパレート裾野パラメータの基準として参照。

総務省統計局「家計調査」
家計収支編(世帯主の年齢階級別)

世帯主年齢階級ごとの実収入水準、世帯人員数、勤労者世帯および無職世帯(高齢層)の構成比率のモデル化に参照。

総務省「就業構造基本調査」
雇用形態別・所得分布データ

正規雇用・非正規雇用比率や定年後の再雇用に伴う中高齢層のグループ内格差拡大($T_g$の上昇)の挙動モデルに参照。

免責事項(Disclaimer)

本ページおよびリポジトリで提供される分析コード、計算ロジック、可視化グラフ、および解説は、タイテル指数(Theil-T Index)の加法分解手法を実証・解説するための研究・教育・技術デモを目的としています。

本分析で用いているデータは、日本の所得分布動向を参考にして統計的手法(対数正規分布およびパレート分布等)に基づき自動生成されたシミュレーションデータ(合成データ)であり、特定の個人・世帯の実測値そのものではありません。

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