なぜみかんの収穫量は激減したのか?

農林水産省の統計で読む、園地の縮小と年ごとの作柄の違い

全国・1973~2025年産|2025年産は概数|確認日:2026年9月17日

50年の減少と、直近の回復を分けて見る

みかんの収穫量は、1975年の366.5万トンから2025年の65.63万トンへ、約82%減少しました。長期的には実をならせる園地の面積が縮小し、年ごとの収穫量には天候や木の実のつき方も影響します。[1] [2]

2024年の55.96万トンから、2025年は前年比17.3%増に回復しました。ただし、実をならせた「結果樹面積」は引き続き減少しています。単年の増収だけで、生産基盤が回復したとはいえません。[2]

過去最高の収穫量(1975年)
3,665 千t
366万5,000トン
最新の収穫量(2025年・概数)
656.3 千t
65万6,300トン
1975年比(2025年・概数)
−82.1%
ピーク時の約18%の水準
前年比(2025年・概数)
+17.3%
2024年の559.6千tから増加

主要果実の収穫量の推移

全国の毎年の収穫量を比較します。1973~2024年は長期累年統計、2025年は各品目の第1報(概数)です。凡例をクリック・タップすると品目を表示・非表示にできます。[1][4]

グラフの表示にはJavaScriptとインターネット接続が必要です。数値は下の表でも確認できます。

単位:千トン(1千トン=1,000トン)。みかんは温州みかんで、いよかん・不知火・せとかなどの中晩柑類は含みません。4品目を同じ長期統計で確認できる1973年から掲載しています。線は年ごとの観測値を結び、未観測の値を曲線で補っていません。

全53年の数値表を見る(1973~2025年)

収穫量は千トン、みかんの結果樹面積はha。2025年は全品目とも概数です。狭い画面では表を左右にスクロールできます。

全国の収穫量とみかんの結果樹面積
年産みかん(千t)りんご(千t)日本なし(千t)ぶどう(千t)みかん結果樹面積(ha)
19733,389.0962.7479.9271.0156,300
19743,383.0850.4507.6294.9160,300
19753,665.0897.9460.5284.2160,700
19763,089.0879.4493.0304.1157,700
19773,539.0958.8518.7326.5153,900
19783,026.0844.0484.1327.7149,400
19793,618.0852.7505.1352.0143,400
19802,892.0960.1484.6323.2135,000
19812,819.0845.7479.2309.9128,000
19822,864.0924.5482.2338.3120,900
19832,859.01,048.0493.1323.7115,900
19842,005.0811.7470.4310.4111,100
19852,491.0910.3461.1311.3106,900
19862,168.0986.1480.7301.9103,000
19872,518.0997.9467.7307.999,700
19881,998.01,042.0447.0295.794,700
19892,015.01,045.0439.1274.778,800
19901,653.01,053.0432.0276.174,100
19911,579.0760.4425.3270.871,700
19921,683.01,039.0418.2276.069,300
19931,490.01,011.0382.3259.568,500
19941,247.0989.3416.9244.967,000
19951,378.0962.6383.1250.365,400
19961,153.0899.2377.7243.963,500
19971,555.0993.3404.6251.362,000
19981,194.0879.1382.4232.960,600
19991,447.0927.7390.4242.259,700
20001,143.0799.6392.9237.558,400
20011,282.0930.7368.2225.456,300
20021,131.0925.8375.7231.755,000
20031,146.0842.2332.2220.853,700
20041,060.0754.4328.1205.652,300
20051,132.0818.9362.4219.951,500
2006841.9831.8291.4210.550,300
20071,066.0840.1296.8209.149,300
2008906.1910.7328.2201.048,300
20091,003.0845.6317.9202.247,000
2010786.0786.5258.7184.846,100
2011928.2655.3286.2172.645,300
2012846.3793.8275.4198.344,600
2013895.9741.7267.2189.743,700
2014874.7816.3270.7189.242,900
2015777.8811.5247.3180.542,200
2016805.1765.0247.1179.241,500
2017741.3735.2245.4176.140,600
2018773.7756.1231.8174.739,600
2019746.7701.6209.7172.738,700
2020765.8763.3170.5163.437,800
2021749.0661.9184.7165.137,000
2022682.2737.1196.5162.636,200
2023681.6604.0183.4167.035,400
2024559.6609.2172.7164.634,500
2025(概数)656.3577.4167.9160.333,800

収穫量を「面積」と「作柄」に分ける

収穫量 ≒ 結果樹面積 × 単位面積当たりの収量

結果樹面積とは、その年に収穫するために実をならせた面積です。まだ実をならせない若木の園地なども含む「栽培面積」とは異なります。みかんの結果樹面積は1975年の160,700haから2025年の33,800haへ、約79.0%減少しました。収穫量の長期的な縮小を読むうえで、面積の変化は欠かせません。[1] [2] [7]

直近3年のみかん:面積は減少、単位面積当たりの収量は変動
年産結果樹面積10a当たり収量収穫量
202335,400ha1,930kg681.6千t
202434,500ha1,620kg559.6千t
2025(概数)33,800ha1,940kg656.3千t

農林水産省は、2025年の増収について、秋の降雨で果実の肥大が進み、高温で作柄が悪かった2024年を上回ったと説明しています。面積が減っても、その年の作柄が改善すれば収穫量は増えます。[2]

10a=0.1ha。各数値は公表時に丸められているため、面積と単収の積が収穫量に完全には一致しません。この分解だけで、政策・高齢化・気候など各要因の寄与率を求めることはできません。

拡大から縮小へ:政策と市場の変化

以下は政策資料に沿った時期の整理です。各要因は重なって作用しており、明確に切り替わったわけではありません。[5]

1. 1960年代~1970年代前半:栽培の急拡大

新植への補助や低利融資を背景に、西日本でみかん栽培が拡大しました。一方、1972年には既に過剰生産による価格暴落「みかん危機」が発生。収穫量が最大となる1975年より前に、供給過剰の問題が表面化していました。

2. 1970年代後半~1980年代:園地の転換・整理

新植の抑制、改植や廃園などによる生産調整が進みました。みかんの収穫量は1990年には165.3万トンまで減少しており、長期的な減少はオレンジの輸入自由化以前から始まっています。[1]

3. 1990年代~2000年代:競争環境の変化と品種転換

生鮮オレンジは1991年、オレンジ果汁は1992年に輸入自由化されました。品質の向上や優良品目・品種への転換も進みましたが、収穫量のグラフだけから自由化の影響の大きさを特定することはできません。[6]

4. 2010年代以降:担い手・園地の維持が課題に

高齢化や労働力不足が生産の制約となり、2020年には政策の軸も生産抑制から生産基盤の強化へ転換しました。現在の減少を、過去の生産調整だけの延長として捉えることは適切ではありません。

減少の背景を読む4つの視点

園地を維持する人と労働力

果樹では剪定・摘果・収穫などに多くの労力が必要で、急傾斜の園地では機械化も難しくなります。担い手の高齢化や季節的な人手不足は、園地の維持や経営の拡大を制約します。[5] [6]

品目転換と「量・金額」の違い

他のかんきつ類への転換は、果樹栽培を続けていても「みかん」の統計から外れます。また、品質向上や価格上昇によって、収穫量が減っても産出額が増える場合があります。重量の減少と農家の所得の減少は同じ意味ではありません。[6] [8]

消費の変化と近年の供給制約

果実全体では消費の減少が続く一方、近年は生産の減少が消費の減少を上回り、卸売価格が上昇する状況も見られます。「人気がなくなったから減った」という一方向の説明では、生産側の課題を捉えきれません。[6]

天候と隔年結果による変動

みかんには実が多くつく年と少ない年が生じる「隔年結果」の性質があります。高温や降雨なども作柄に影響します。長期傾向の判断には複数年を見比べる必要があり、特定年の減少すべてを温暖化の影響と断定することはできません。[2] [8]

出典と数値の読み方

収穫量は、生食用・加工用として流通する基準を満たす果実の重量です。実際に市場へ出した「出荷量」、国内消費量、農家の所得とは異なります。全国値には、調査年によって主産県の調査結果等から推計した値が含まれます。[7]

確認日:2026年9月17日。2025年産は概数で、後日の確報・訂正で変わる可能性があります。増減率は掲載値から計算し、小数第1位に丸めています。1975年比=(対象年の収穫量 ÷ 3,665 − 1)×100。前年比=(656.3 ÷ 559.6 − 1)×100。2024年の1975年比は−84.7%です。

  1. 農林水産省/e-Stat「令和6年産果樹生産出荷統計・長期累年」全国表(1973~2024年、2026年3月23日更新):みかんりんご日本なしぶどう。各Excelの「全国」「収穫量」(t)を1,000で割って掲載。みかんの結果樹面積(ha)も同表から採録。
  2. 令和7年産みかんの栽培面積、結果樹面積、収穫量及び出荷量、その他かんきつ類の栽培面積(PDF)(2026年5月26日公表)。2025年概数、直近の単収、作柄の説明。
  3. 令和7年産りんごの栽培面積、結果樹面積、収穫量及び出荷量(PDF)(2026年5月26日公表)。2025年概数。
  4. 令和7年産日本なし、ぶどうの栽培面積、結果樹面積、収穫量及び出荷量(PDF)(2026年2月17日公表)。2025年概数。
  5. 果樹農業の現状と課題について(PDF)(2024年10月)。資料内p.2の政策・輸入自由化の年表、担い手・生産基盤に関する整理。
  6. 令和6年度 食料・農業・農村白書「消費者の需要に即した農業生産の推進と農業経営の安定」。「果樹農業における生産基盤強化を推進」の項。品種転換、労働上の課題、果実全体の需給と産出額。
  7. 作況調査(果樹)の概要。用語の説明、集計・推計方法、調査対象。
  8. 平成21年産みかんの結果樹面積、収穫量及び出荷量(PDF)。隔年結果の説明と、廃園・その他かんきつ類への転換の記録。